「債務整理は早ければ早いほど良い」といわれることもありますが、現実には先延ばししているうちにどんどん状況が悪化してしまい、選択肢が失われてしまうケースが少なくありません。
相談に来られる方のお話をお聞ききすると、「債務整理をしようか?」という考えが頭をよぎっても、「まだ弁護士に相談するのは早い」「もうちょっと自力で頑張ってみよう」などと思われる方が多いようです。
そこで、以下では債務整理を弁護士に相談すべきタイミングをご紹介します。以下のような場合には、お早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
このページの目次
1.自転車操業状態になっている
借金が増えてくると、「借金をして借金を返す状態」に陥ります。これを「自転車操業状態」といいます。
たとえばA社、B社、C社の3社から借金をしているとしましょう。A社への返済はB社からの借入によって行い、B社への返済はC社からの借入によって行い、C社への返済はA社からの借入によって行うのが自転車操業状態です。
自転車操業状態に陥ると、ほとんど借金が減りません。それどころか借り増しにより借金が増える一方です。このような状況で自力で完済することは不可能なので、早めに債務整理しましょう。
2.元本が減らない
消費者金融やクレジットカード会社の借金は非常に高金利です。毎月の支払のほとんどが利息に充当され、元金が全く減らないといった状況に陥る方が多数おられます。
元金を減らせなければ、いつまで経っても借金を完済できません。任意整理をすれば利息をカットして元金のみの返済に落とせる可能性がありますので、早期に手続きを開始しましょう。
3.収入がなくなった、なくなる見込みがある
リストラや廃業、病気やけがなどにより、収入がなくなってしまった、なくなる見込みがある場合は、早めに債務整理をしましょう。収入がない状態では、借金を返せなくなってしまいます。
返済を滞納してしまうと、債権者から督促が続いて厳しい状況に陥ります。利息もかさんで返済すべき金額がどんどん増えてしまうでしょう。早いうちに任意整理や自己破産によって解決するのが得策です。
4.生活保護を受けたい
病気やけが、障害、小さい子どもを抱えているなどの事情ではたらくのが難しい方がおられます。そういった状況であれば、生活保護を受給することが考えられます。
ただ生活保護を受けるには、借金が障害となります。借金を返済している状態では、生活保護の受給が難しくなるためです。生活保護を受けるには自己破産をして借金を0にしなければならない可能性があります。
「自己破産したら生活保護を受けられなくなるのではないか?」「年金をもらえなくなるのではないか?」などと不安を感じる必要はありません。自己破産しても生活保護、年金等の公的な支援、給付金を受給することはできます。
「自力で生活できないので生活保護を受けたいけれど借金がある」方は、早めに弁護士に相談して自己破産の手続きを進めましょう。
5.手取りの3分の1以上が借金返済に回っている
「手取り給料のうち何割が借金にまわっていたら債務整理すべきか?」に対する回答は人それぞれです。独身で給料が高い方なら手取りの2分の1を返済に回しても余裕があるでしょう。低賃金で妻子がいる方の場合、手取りの5分の1の返済も厳しい可能性があります。
ただ、目安として手取りの3分の1以上を借金返済に回しているなら、債務整理を検討した方が良い状況といえるでしょう。
それ以上や以下の方でも、「返済が苦しい」と感じているなら、一度弁護士までご相談ください。
6.おまとめローン、借金の一本化を検討している
複数の借入先から借金していると「おまとめローン」を利用して借金を一本化しようとする方がおられます。おまとめローンを利用すると、借金の状況を把握しやすくなり、金利や毎月の返済額を落とせるケースがあるからです。
しかし、おまとめローンを利用しても、結局は金利を払い続けなければなりません。総返済額が増えてしまうケースもあります。おまとめローンは借金問題の根本的な解決方法にはなりません。
借金が増えておまとめローンを検討しているなら、おまとめローンではなく債務整理をするよう強くお勧めします。
7.結婚や出産
結婚するなら借金をなくしてきれいな状態で臨みたいものです。借金を抱えていると、パートナーやご家族に迷惑をかけてしまうことや,夫婦・家族関係に影響を及ぼしてしまうことが多々あります。
また、子どもが生まれると、生活費や教育費などお金がかかる一方で、場合によっては母親が働けなくなってしまうなど、減収が発生する可能性もあります。お子さんが生まれる前に、借金を整理しておくことが得策でしょう。
結婚や出産などのライフイベントの際は、債務整理を検討する良い機会といえます。
8.滞納して一括請求された
借金を滞納し続けていると、債権者から「一括請求通知」が届きます。貸金業者との約定では、2~3ヶ月分滞納すると残金を一括払いしなければならないと定められているからです。しかし月々の支払すら苦しいのに一括払いするのはなおさら困難でしょう。
また住宅ローンは半年程度滞納すると、一括払いしなければならないケースが多数です。一括請求後しばらくしたら「保証会社」が代位弁済を行います。すると、待っているのは「競売」です。最終的には家が失われてしまうことになります。
一括請求されたら、一刻も早く弁護士に相談してください。早期であれば任意整理や個人再生が可能です。住宅ローンを滞納していても、個人再生で家を守れる可能性があります。
9.裁判をされた、強制執行を受けた
借金を滞納すると、債権者から訴訟を起こされて判決がくだり、最終的に給料などを差し押さえられる可能性があります。
給料差押えを受ける状況であれば、一刻も早く債務整理をすべきです。個人再生や自己破産をしたら、差押を止めることも可能です。また個人再生や自己破産の開始決定が下りるとその後に新たな差押ができなくなるので、差押されそうな状況でも有効な対処方法となります。
裁判を起こされたり強制執行を申し立てられたりしたら、一刻も早く債務整理をしましょう。
10.債務整理は「早ければ早いほどよい」とされる理由
債務整理に取り組むのは「早ければ早いほど良い」といわれます。
これは、ほとんどのケースであてはまります。以下でその理由をみてみましょう。
10-1.とりうる手段が増える
早めに債務整理をすると、選択肢が増えます。たとえば早期であれば任意整理や個人再生を選択できるので、自己破産によって財産を失わずに済む可能性が高くなります。
一方でタイミングが遅れると自己破産せざるを得ず、不利益が大きくなる傾向があります。
借金が400万円程度ある方の例を考えてみましょう。 この方は債務整理をせずに「おまとめローン」を利用して自力返済しようとしました。しかしおまとめローンを利用しても完済が難しく、以前利用していたカード会社からの勧誘にのって借り増しをしてしまいました。結果的におまとめローンの借金が400万円、他のカードなどの借金が300万円となり、借金額は700万円まで増えました。 400万円であればなんとか任意整理で解決できたけれど、700万円ともなれば自己破産するしか選択肢がありません。家も預貯金も保険も車もなくなり、ダメージが非常に大きくなってしまいました。 早く任意整理をしたら家も車も残せて借金額も少額に抑えられたのに、対応が遅れたためにデメリットが大きくなったといえます。 |
10-2.ダメージが少なくなる
早期に債務整理をすると、借金問題によるダメージが小さくなります。
一方で借金問題を放置して先延ばしにすると、さまざまなトラブルや損害が発生します。借金を放置する具体的なリスクの代表例として、以下のようなものがあります。
- 家を失うリスク
住宅ローンを組んでいる方の場合、早期に個人再生すれば家を守れますが、放置すると家が競売にかかって失われてしまう可能性が大きく高まります。
- 離婚リスク
借金に追われる生活は、配偶者にも負担をかけます。次第に夫婦関係が悪化して離婚に至ってしまうカップルも少なくありません。
- 夜逃げリスク
借金返済を苦にして夜逃げしてしまう方がおられます。そうなったら仕事も辞めなければならず住民票も移せず、ひっそりと生活せざるを得ないでしょう。早めに債務整理すればそのような不自由な暮らしをする必要は一切ありません。
- 闇金に手を出すリスク
通常の貸金業者から借入ができなくなって闇金に手を出してしまう方もおられます。早めに債務整理していれば避けられるリスクです。
借金返済が苦しい状況を放置すると、さまざまなトラブルが発生します。そうなる前に、早めに弁護士に依頼して債務整理をしましょう。