自己破産の非免責債権

自己破産をすると、すべての借金が免除されると考えていませんか?

確かにほとんどの負債が免除されますが、一部は自己破産後も返済が必要になってしまうものがあります。

自己破産でも免除してもらえない「非免責債権」について解説します。

 

1.非免責債権とは

非免責債権とは、自己破産をしても免除してもらえない債権(負債)です。

自己破産をすると「免責」を受けることによって負債の支払い義務を免除してもらえます。

免除されるのは借金だけではありません。以下のような負債はすべて免責の対象です。

  • キャッシング、リボ払い、消費者金融、クレジットカード、銀行カードローンの債務
  • 立替金
  • 住宅ローン、車のローン、事業用ローン、教育ローン
  • 保証債務
  • リース料
  • 買掛金
  • 未払い家賃
  • 未払いのスマホ代、通信費
  • 未払いの水道光熱費(ただし、下水道料金除く)

ただし、免責によっても免除してもらえない負債があります。それが非免責債権です。非免責債権がある場合、自己破産後にも支払い義務が残るので、債権者と協議するなどして支払を継続しなければなりません。

 

2.非免責債権の種類

非免責債権には具体的にどういったものがあるのか、みていきましょう。

 

2-1.税金、保険料

税金や保険料が未払いになっている場合、自己破産をしても免責されません。

具体的には以下のような負債が非免責債権となります。

  • 所得税、住民税、相続税、固定資産税、延滞税などの税金
  • 健康保険料
  • 年金保険料
  • 下水道料金

水道料金については、上水道料金は免責されますが、下水道料金は非免責債権となるので注意しましょう。

 

2-2.罰金

刑事罰として課される罰金や科料などの制裁金は自己破産をしても免責してもらえません。

具体的には以下のようなお金が非免責債権となります。

  • 罰金(1万円以上の刑事罰にもとづく賦課金)
  • 科料(9,999円までの刑事罰にもとづく賦課金)
  • 刑事訴訟費用
  • 追徴金
  • 過料(行政罰として課されるお金)

上記のようなものを自己破産で免責してしまったら、犯罪や法律違反行為が許されることになってしまいます。

そういった状況になると不都合が大きいので、非免責債権とされています。

 

2-3.故意又は重過失による生命、身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

不法行為にもとづく損害賠償請求権のうち「故意や重過失」によって「相手の生命や身体」を害した場合には非免責債権とされます。

つまり、わざとあるいは重大な不注意によって被害者を死なせてしまったり傷つけてしまったりすると、その損害賠償債務は免責されない、ということです。

  • 殺人
  • 故意や重大な過失による傷害致死
  • 放火で人を傷つけた、殺してしまった
  • 故意や重過失による交通事故(人身事故)

このような場合には、相手に対する治療費や慰謝料、逸失利益などの負債が免責されないと考えましょう。

 

2-4.悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

不法行為にもとづく損害賠償債務のうち、「生命や身体以外に対する負債」は原則として免除されます。たとえば、プライバシー侵害にもとづく慰謝料や不倫の慰謝料などは、生命や身体に関連しないので基本的に免責されると考えられます。

ただし、生命身体以外にむけた不法行為でも「悪意」でくわえた場合には、非免責債権となる可能性があります。

悪意とは「相手を困らせてやろう」などの積極的な意図です。たとえばお金を横領したり窃盗行為をしたり名誉毀損したりして「犯罪」が成立するような場合、賠償金は自己破産をしても免責されない可能性が高くなります。

 

2-5.婚姻費用、養育費、扶養料

夫婦はお互いに生活費を分担しなければなりません。夫婦が分担すべき生活費を「婚姻費用」といいます。

また、親であれば、別居していても子どもに対する「養育費」を払う義務があります。

さらに一定範囲の親族は、互いに困窮している相手に対して「扶養料」を払わねばなりません。

これらの親族間の不要に関する義務は、自己破産によっても免責されないので注意しましょう。特に養育費や婚姻費用を払えなくなって滞納している場合、自己破産をしても支払い義務が残ります。

 

2-6.個人事業主が従業員へ支払給料や預かり金

個人事業主として従業員を雇って給料を支払っている場合、その給料は非免責債権となります。

自己破産しても、元の従業員へ未払いの給料を払わねばなりません。給料以外に預かり金があった場合も同様です。

ただし、法人として人を雇用していた場合には、法人が破産すると給与の支払い義務も消滅します。個人は自己破産しても生き続けますが、法人が破産すると法人自身が消滅し、債務を支払う主体がなくなってしまうからです。

従業員の給料については、個人事業主として営業しているか法人化しているかで大きく取扱いが異なるので、注意してください。

 

2-7.申告しなかった債権

破産手続きにおいて、破産者は把握している債権者をすべて裁判所へ報告しなければなりません。故意に隠していた場合には、その債権者に関する債権は免責してもらえないので注意しましょう。

また、故意に債権者を隠すと「免責不許可事由」にもなります。重大な免責不許可事由があると、その債権だけではなくすべての負債が免除されずに残ってしまうので、自己破産する意味がなくなります。

破産するときには、くれぐれも債権者隠しをしないよう、注意しましょう。

 

3.非免責債権がある場合の対処方法

以下で非免責債権がある場合の対処方法をパターン別にご紹介します。

 

3-1.税金、健康保険料を払えない

破産後も税金や健康保険料が残ってしまい、払えない場合には所轄庁に連絡をして支払方法を協議しましょう。住民税や固定資産税、健康保険料なら市町村役場、所得税や相続税なら税務署です。

誠実に払う姿勢を見せれば、分割払いさせてもらえるケースがあります。

また、どうしても払えない場合、納税を猶予してもらえたり、健康保険料の減免や猶予をしてもらえたりする可能性もあります。

放置していると資産を差し押さえられる可能性が高まるので、早めに連絡をして現状を伝え、相談してみてください。

 

3-2.養育費や婚姻費用を払えない

養育費や婚姻費用などの不要に関する義務も非免責債権です。

これらをどうしても払えない場合には、債権者となっている配偶者やその他の親族に連絡をして、状況を伝えて支払方法を相談しましょう。相手に理解があれば、減免してもらえる可能性もあります。

また、調停などによって金額が決定しており、過大で支払えない場合には、減額調停を申し立てて金額の決め直しをしましょう。たとえば、婚姻費用であれば「婚姻費用減額調停」、養育費であれば「養育費減額調停」を申し立ててください。

ただし、調停によって金額が減額されるのは、基本的に「調停を申し立てた月から」となります。現在の金額が収入に比較して高すぎるなら、早めに申立をするようお勧めします。

調停の方法がわからない方は、弁護士までご相談ください。

 

3-3.損害賠償債務を払えない

損害賠償債務が過大で支払えない場合には、債権者(被害者)と協議するしかありません。

支払える範囲で分割払いの約束をして、合意書を作成しましょう。

払わないで放っておくと訴訟をされて財産の差押をされるリスクがあるので、注意が必要です。

 

3-4.給料を払えない

従業員の給料を払えない場合には、従業員と協議して払える範囲で分割払いをしましょう。

合意ができたらその内容を明らかにするために、合意書を作成するようお勧めします。

 

3-5.罰金を払えない

罰金や科料を支払えない場合には、検察庁に連絡を入れて状況を伝え、支払方法を相談してみてください。

ただし、相談をしても免除してもらえるわけではありませんし、必ずしも分割払いさせてもらえるとは限りません。

どうしても罰金の支払ができない場合には「労役場」へ連れて行かれて仕事をさせられます。定められた期間、労役場ではたらけば罰金を完納した扱いになって解放してもらえます。

労役場ではたらきたくない方は、親族に立て替えてもらうなどして、その前に何とか支払をしましょう。

 

まとめ

自己破産をしても必ずしもすべての負債が免除されるわけではありません。特に税金や保険料が残って困ってしまう方がたくさんおられます。

一方で、通常の借金については限度額もなく、すべて免責されるので自己破産には借金問題解決の絶大な効果があるといえるでしょう。借金トラブルでお困りの方がいらっしゃいましたら、まずは一度弁護士までご相談ください。

 

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