住宅ローンをどうしても払えない場合には、「任意売却」によって解決できる可能性があります。
そこで、住宅ローンを払わないで放置するリスクや任意売却のメリット、方法、注意点を解説します。
このページの目次
1.住宅ローンを払わず放置するとどうなる?
住宅ローンを払えなくなったとき、支払をしないまま放置すると以下のような流れで家が失われます。
1-1.督促される
まずは金融機関から督促されます。電話や郵便で問合せをされたり、支払を促されたりするケースが多いでしょう。この段階できちんと延滞分を支払えば、家が失われることはありません。
1-2.代位弁済される
住宅ローンを返済せずに半年程度放置すると、保証会社や信用保証協会が「代位弁済」をします。代位弁済とは、保証人が主債務者に代わって債権者へ支払いをすることです。
これにより、債権者が金融機関から保証会社へ変更されます。
1-3.家が競売にかけられる
代位弁済後、保証会社は債務者へ残ローンの一括請求を行います。経過日数分の遅延損害金も足されるので、請求額はかなり大きくなるでしょう。
支払ができずに放置していると、裁判所へ申立をされて家を競売にかけられるのが通常です。
1-4.残債務の支払いを請求される
競売手続きが完了すると、家は競落人のものとなります。
債務者は所有権や居住権を失うので、引っ越しをしなければなりません。
また、競売によって入金された代金は残ローン支払いに充てられますが、それでも払いきれないケースが多々あります。残ったローンは、債務者が返済しなければなりません。
このように家を失っても、残ローンは免除されないので注意が必要です。支払ができなければ自己破産しなければならない可能性もあります。
住宅ローンを返済せずに放置していると、最終的に競売にかかって残ローンの支払いまで請求される可能性が高まります。そのようなことのないよう早期に対応しましょう。
2.任意売却とは
住宅ローンを払えないなら「任意売却」が有効な対処方法となります。
任意売却とは、金融機関の同意のもとに、市場で不動産を売却することです。
裁判所の競売ではなく、「不動産会社に依頼して自分で不動産を売る方法」と理解すると良いでしょう。
売却により入ってきた代金は、住宅ローン返済に充てられます。完済できれば残ローンを払う必要はありません。
一方、ローンが残った場合には保証会社と話し合って支払いをします。ただし競売のケースより、保証会社が柔軟に対応する傾向があります。
3.任意売却のメリット
3-1.競売より高く売りやすい
任意売却をすると、競売より高く売れるケースが多数です。競売では実勢価格の8割やそれ以下になってしまう事例も少なくありません。
高く売れたら、その分多く残債を減らせます。住宅ローンを完済できる可能性が高くなりますし、残ローンが発生しても少額なので払いやすくなるでしょう。
3-2.引っ越し費用を出してもらえる
競売になった場合、売却金から引っ越し代を出してもらうのは不可能です。全額、自分で捻出しなければなりません。
任意売却する場合には、引っ越し費用を出してもらえる場合があります。ただでさえお金に窮している債務者には、随分と大きな助けとなるでしょう。
3-3.プライバシーを守りやすい
競売になると、物件情報が全国に公開されます。誰でも閲覧できる状態になりますし、実際に自宅周辺へ不動産屋が調査にやってくるケースも多々あります。近隣住民に聞き込みが行われたりするので、不審に思われる可能性も懸念されるでしょう。
任意売却なら一般の不動産売却の手続きを行うだけなので、住宅ローンの滞納を全国に知られる危険性はありません。近隣住民から不審に思われることもなく、プライバシーを守りやすいでしょう。
3-4.残ローンを分割払いしやすい
競売になっても住宅ローンを完済できなかった場合、保証会社は残ローンを一括払いするよう求めてくるケースが多々あります。数百万、数千万円という金額の一括払いを求められても、ほとんどの方が対応できないでしょう。
任意売却であれば、保証会社も柔軟に対応するので分割払いの話し合いに応じてくれやすい傾向があります。それであれば自己破産を避けられる方も多く、メリットを受けられます。
4.任意売却の方法
任意売却するときには、以下のように進めましょう。
4-1.不動産会社で査定をとる
まずは不動産会社で、自宅の査定をとりましょう。
このとき、任意売却に対応している不動産会社を選ぶことが重要です。
すべての不動産会社が任意売却に対応しているとは限らないので、注意してください。
4-2.金融機関の承諾を得る
査定書を入手したら、金融機関へ連絡を入れます。査定書を送って「任意売却したい」と申し出てください。
金融機関が了承すれば、任意売却の手続きを進められます。
4-3.売却手続きを進める
金融機関が任意売却を承諾したら、不動産会社と媒介契約を締結し、売り出しを開始しましょう。
後は通常通り、買主を見つけて条件交渉を行い、売却するだけです。
ただし最終条件を決めるときには、金融機関の承諾が必要になります。
4-4.決済する
任意売却の場合、売却金から残ローンを返さなければなりません。決済によって支払われた金額は、そのまま金融機関へ払われます。
5.任意売却の注意点
任意売却には以下のような注意点があります。
5-1.期限がある
任意売却は、いつまででもできるわけではありません。競売手続きが進みすぎると、間に合わなくなります。
どんなに遅くても「開札日の前日」までに完了しなければなりません。
また任意売却にも時間がかかるので、直前になってから売り出しを開始しても間に合いません。あまりに直前になると金融機関が競売の取り下げに同意しない可能性が高くなります。
住宅ローンを滞納したら、早い段階で金融機関へ連絡し、任意売却の手続きを進めましょう。
5-2.売れない可能性がある
任意売却を成功させるには、買い手を見つけなければなりません。しかし人気のない物件の場合、買い手がつかないケースも考えられます。
また任意売却には期限があるので、ゆっくり買い手を探している余裕はありません。期間内に良い買い主が見つからなければ、任意売却を断念せざるを得ないケースもあります。
5-3.必ず高く売れるとは限らない
任意売却をすると、競売より高額で売りやすい傾向があるのは事実です。しかし必ず競売より高く売れるとは限りません。
市況や物件の状態などの諸事情により、競売より売却価額が低くなる可能性もあります。
5-4.残ローンが残る可能性がある
任意売却しても、住宅ローンを完済できるとは限りません。
ローンが残ったら、任意売却後も返済しなければならないので、注意しましょう。
6.残ったローンを払えない場合
任意売却後、残ったローンを払えないときには以下のように対応してみてください。
6-1.保証会社と分割払いの交渉をする
まずは保証会社と交渉しましょう。
支払可能な範囲で分割払いの設定ができれば、債務整理をする必要はありません。
任意売却の場合、競売より分割払いの交渉に応じてもらいやすい傾向があるので、遠慮せずに提案をしてみてください。
6-2.債務整理する
分割払いも困難なケースでは、債務整理をしましょう。
任意整理をすると、高額な遅延損害金や利息をカットできます。財産がなくなることもありません。残債の金額が少額であれば非常に有効といえるでしょう。
個人再生であれば、残債を元本ごと大きく減額できます。預貯金や保険などの財産を失いたくない方にとってはメリットがあります。
どうしても払えない場合、最終的に自己破産をすれば残ローンを全額免除してもらえます。
めぼしい財産がなければ、簡単な「同時廃止」という手続きを選択してもらえるので、余計な費用がかかりません。期間も短くて済みます。
まとめ
今回は任意売却で家を上手に手放す方法をご紹介しましたが、住宅ローン以外に借金がかさんでいる場合には、「住宅ローン特則つき個人再生」によって家を守れる可能性もあります。
任意売却を進めるとしても、弁護士に相談しておくと安心して手続きできるでしょう。一番やってはいけないのは「放置すること」です。
住宅ローンの支払いが難しくなってお困りの場合、お早めに弁護士までご相談ください。