「個人再生」という言葉を聞いたことがあっても、具体的な流れをイメージしにくい方が多いのではないでしょうか?実際、個人再生をするときには裁判所への申立が必要で、手続き進行も複雑です。
個人再生の一般的な流れやかかる期間を把握しておけば、安心して手続きを進められるでしょう。
一般的な「小規模個人再生」の流れや期間を解説しますので、これから個人再生を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
1.小規模個人再生とは
小規模個人再生は「原則的な個人再生」手続きです。
個人再生は裁判所へ申し立てて借金を大きく減額してもらい完済を目指す債務整理の手法であり、その中には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。
給与所得者等再生は、会社員や公務員などの給与所得者や年金生活者など、収入が非常に安定している人だけが利用できる個人再生手続きです。
一方で、小規模個人再生は、給与所得者だけではなく個人事業主やアルバイト、パートなどの方でも利用しやすい一般的な個人再生手続きです。
給与所得者等再生と小規模個人再生を比べると、小規模個人再生の方がより大きく借金を減額してもらえるケースが多数です。そこで給与所得者であっても、小規模個人再生を選択する傾向があります。
一般的に「個人再生」というと「小規模個人再生」を意味することが多いので、この記事でも小規模個人再生をベースにして流れや期間をご説明していきます。
2.個人再生の流れ
- 弁護士に依頼する
- 債権調査を行う
- 必要書類を揃える
- 申立をする
- 個人再生手続き開始決定が下りる
- 積立を開始する
- 債権額を確定する
- 再生計画案を作成する
- 債権者による書面決議が行われる
- 再生計画案が認可、確定する
- 支払開始
以下で順番に説明します。
STEP1 弁護士に依頼する
まずは弁護士に借金問題を相談しましょう。
個人再生は自分で申し立てできないこともありませんが、非常に困難です。必要書類も多く、申立後も裁判所や債権者などとのやり取りが発生します。専門知識のない方が1人で進めるのは、ほぼ不可能といえるでしょう。自分では、そもそも個人再生が適しているのかどうかも判断できないケースが多数です。
借金に困ったら早めに弁護士に相談して、個人再生に関する委任契約を締結しましょう。
弁護士に依頼したら、債権者からの督促がピタッと止まります。貸金業法により、弁護士介入後の直接の取り立てが禁止されるためです。
連日の電話や郵便による督促に疲弊している方は、なおさら早めに弁護士に個人再生を相談してください。
STEP2 債権調査を行う
弁護士に依頼したら、弁護士が各債権者へ受任通知を送り債権調査を進めます。受任通知が到達した時点で支払い請求が止まります。債権調査は弁護士が行うので、依頼者自身は対応する必要がありません。
STEP3 必要書類を揃える
弁護士が債権調査を進めている間、依頼者は必要書類を集めます。住民票、預貯金通帳、不動産の全部事項証明書や住宅ローンの契約書など、個人再生ではさまざまな書類が必要です。弁護士・スタッフが必要書類をご案内いたしますので、1つ1つ揃えていってください。
少し大変ではありますが、ここで必要書類を早めに収集することが、スピーディに個人再生を終わらせるポイントとなります。
STEP4 申立をする
書類が揃ったら、弁護士が裁判所へ個人再生の申立をします。申立の手続き自体は弁護士が行うので、依頼者は対応する必要がありません。ただし不足があれば裁判所から指摘があり、追加書類を提出するケースもあります。弁護士から連絡があれば、早めに対応しましょう。
STEP5 個人再生手続き開始決定が下りる
申し立てに特段問題がなければ、個人再生手続き開始決定が下ります。このとき、官報に情報が掲載される「官報公告」が行われます。
STEP6 積立を開始する
個人再生手続きの進行中は「積立」をしなければなりません。
積立とは、個人再生後に支払を予定する金額を月々自主的に積み立てることです。
個人再生で再生計画案が認可されたら、3年間支払いを継続しなければなりません。それがきちんとできるかどうか、積立状況を確認して裁判所が判断します。
積立を確実にできない場合「支払ができない」と判断されて個人再生手続きを進めてもらえなくなったり廃止されたりするリスクもあります。
積立指示を受けたら、毎月確実に毎月積立を行っていきましょう。
STEP7 債権額を確定する
個人再生手続きが開始されると、「債権額」を確定する手続きを進めます。
まずは債務者側から各債権者に対し、債権届を促します。
債権届が揃ったら、債務者側が内容に異議を出すかどうかを検討し、異議があるなら債権者へ通知します。なければそのまま債権額が確定します。
異議が出た場合、債権者の方から裁判所へ「評価申し立て」ができます。
これにより、最終的に債権額が確定します。
STEP8 再生計画案を作成する
債権額が確定したら、債務者側が再生計画を立てなければなりません。再生計画案には提出期限が定められ、一日でも遅れると個人再生手続きが廃止されてしまうので注意しましょう。
弁護士に依頼していれば弁護士がきちんと対応するので、依頼者は特に何もしなくてかまいません。自分で対応する場合には「必ず期限内に提出しなければならない」ので、ご注意ください。
STEP9 債権者による書面決議が行われる
再生計画案を提出すると、債権者による書面決議が行われます。書面決議とは、提出された再生計画案に対して債権者が意見を出す手続きです。実際に集まって意見を出してもらうのは煩雑なので、書面で意見を聞くことになっています。
決議の方法として、再生計画案の内容に賛成する債権者は賛成票を提出する必要はありません。反対する債権者だけが反対票を提出します。実際には債権者がカード会社や消費者金融、銀行などの金融機関などの場合、ほとんど反対されることはありません。
直前にクレジットカードの現金化などをしてカード会社とトラブルになっているケースや、債権者が個人の場合などには反対される可能性があります。
過半数の債権者が反対しなければ、再生計画案は認可されます。
一方、過半数の債権者が反対すると、再生計画案を認可してもらえず個人再生手続きが廃止されてしまいます。
書面決議における「債権者の過半数」は「人数」と「債権額」の両面から審査されるので注意しましょう。半数を超える人数の債権者が反対したら、再生計画案は認可されません。 人数的には少なくても、半額以上の債権を有する債権者(複数の債権者が反対すれば債権額が合算されます)が反対すると、やはり再生計画案が認可されません。 多数の債権者が反対している場合や多額の債権を持っている債権者が反対している場合、不認可の可能性が高くなります。 また書面決議に付する決定は、官報公告されます。 |
STEP10 再生計画案が認可、確定する
再生計画案に対して過半数の反対がなければ、再生計画案が認可され「再生計画認可決定」が出ます。その後5週間程度で認可決定が確定します。
認可決定のタイミングでも、再度官報公告が行われます。
まとめると個人再生で官報公告されるタイミングは、以下の3回となります。
- 個人再生手続き開始決定が下りたとき
- 書面決議に付する決定があったとき
- 再生計画認可決定があったとき
STEP11 支払開始
再生計画の認可決定が確定したら、翌月から支払を開始するケースが多数です。
2-1.返済期間は3年間
個人再生後の返済期間は、原則として3年間となります。ただし、どうしても3年での返済が苦しい場合には、5年まで延ばしてもらえる可能性があります。
短期間での返済が難しいなら、個人再生を申し立てる際に弁護士に相談してください。期間を長くしてもらえるよう調整してもらいましょう。
2-2.給与所得者等再生の場合
上記の流れは原則的な小規模個人再生の場合のものです。給与所得者等再生の場合には、上記のうち「債権者による書面決議」が省かれます。給与所得者等再生では、債権者が反対していても再生計画案が認可されるルールになっているためです。
その他の進行方法はほぼ同じなので、参考にしてみてください。
3.個人再生にかかる期間
次に個人再生にかかる期間をみていきましょう。
3-1.弁護士に依頼してから申立までの期間
個人再生は、弁護士に依頼してから申し立てまでに多少期間がかかります。必要書類が揃わないと申立ができないためです。
早く資料を集めれば早く申立ができますが、遅れると申し立て時期もどんどん遅れていきます。
早い方であれば弁護士に依頼してから1ヶ月程度で申し立てができますが、遅い方の場合、半年程度かかるケースもあります。
一般的には2~3ヶ月程度とみておくとよいでしょう。スピーディに個人再生を終わらせたい方は、申し立て前に早めに書類を集めるようお勧めします。
3-2.申立から再生計画認可決定までの期間
個人再生の申立から再生計画認可決定までにかかる期間は、だいたい半年くらいです。
ただし再生計画認可決定から確定までの間に1ヶ月程度かかるので、認可決定が下りてから実際に返済が始まるまでには多少の間が空きます。
3-3.弁護士に依頼してから支払開始までの期間
個人再生を弁護士に依頼してから実際に支払が開始するまでの期間は、申し立てまでにどのくらいの期間がかかったかなどの個別事情によって大きく異なります。
4.早めに個人再生を完了するコツ
個人再生を早期終わらせるには、いくつかのポイントがあります。
4-1.申し立て前の書類集めを早めに行う
まずは、申立前の書類集めに素早く対応しましょう。この段階で手間取ってしまう方が非常にたくさんおられます。わからないことがあれば弁護士に確かめて、できるところから対応していきましょう。
4-2.手続き中の照会事項にすぐに対応する
個人再生の手続き進行中、弁護士や裁判所から質問されたり追加の資料提出の指示を受けたりするケースも少なくありません。そういったときには、早めに対応しましょう。
弁護士から電話がかかってもなかなか出なかったり連絡を受けても対応せずに放置したりすると、どんどん手続きが長びいてしまいます。連絡を取りづらくなると最終的に手続きを進められなくなるリスクもあるので、注意してください。
5.まずはお気軽にご相談を
個人再生には半年以上の長い期間がかかりますが、ご本人にかかる負担は大きくありません。「やってみると意外と簡単だった」と感じる方も多いので、気負わず気軽に相談してみてください。