個人再生をすると、借金を大きく減額できます。
借金額が膨れあがり任意整理では対応できない方でも、個人再生を利用すれば元本ごと借金を減らせて解決できるケースが少なくありません。
ただ「個人再生をすると、具体的にどのくらい借金を減らせるのか?」わからない方が多いでしょう。
個人再生でどこまで借金が減額されるのかをわかりやすく解説します。
このページの目次
1.基本的には「最低弁済基準」まで減額される
個人再生によって減額される金額には、一定のルールがあります。
基本的には「現在の借金額」に応じて、支払わねばならない負債額が決定されます。
その「最低限支払わねばならない金額」を、「最低弁済基準」といいます。
借金総額ごとの最低弁済基準は、以下のとおりです。
【最低弁済基準の表】
借金が100万円以下 |
減額されない(そのまま残る) |
借金が100万~500万円 |
100万円にまで減額 |
借金が500万~1,500万円 |
5分の1にまで減額 |
借金が1,500万~3,000万円 |
300万円にまで減額 |
借金が3,000万~5000万円 |
10分の1にまで減額 |
個人再生をすると、おおむね上記の程度にまで減額されると考えましょう。
1-1.100万円以下には減額されない
個人再生をしても、借金が100万円以下になることはありません。
負債総額が100万円以下の場合には、個人再生するメリットが小さくなるでしょう。
1-2.借金額が増えると減額率が高くなる
個人再生の特徴として、借金額が増えると減額率が高くなる点があげられます。
たとえば、借金額が500万~1,500万円であれば5分の1にしかなりませんが、3,000万円を超えると10分の1にまで減らしてもらえます。
1-3.限度額は5,000万円
個人再生の限度額は5,000万円です。5,000万円の借金のある方の場合、個人再生をすれば500万円にまで減らしてもらえます。
5,000万円を超える場合には個人再生を適用できないので、通常の民事再生手続きや自己破産をする必要があります。
2.住宅ローン特則を利用する場合の減額率
個人再生には「住宅資金特別条項」という特則があります。これは住宅ローンを抱えている人が、住宅ローン以外の借金のみ減額してもらえる特則。わかりやすく「住宅ローン特則」ともよばれます。
たとえば、住宅ローンとクレジットカードやカードローンの負債がある場合、クレジットカードやカードローンの負債のみを減額してもらえます。住宅ローンはそのまま支払うので、家を失わずに借金問題を解決できて大きなメリットを得られます。
住宅ローン特則を適用する場合、住宅ローンは最低弁済基準の計算対象になりません。
住宅ローン以外の負債のみを対象として借金の減額率を計算するので、注意しましょう。
住宅ローン特則を利用する場合の計算・具体例
たとえば、住宅ローンが4,000万円、その他の借金が2,000万円ある方の場合、借金総額は6,000万円となります。一見すると個人再生の限度額を超えてしまいそうに思えるでしょう。
しかし、住宅ローン特則を利用するなら4,000万円の住宅ローンは計算から省くので、借金額は2,000万円と評価されます。よって個人再生を利用して解決が可能です。
減額対象となるのも2,000万円のみなので、上記の表を適用してこの部分を「300万円」にまで減額してもらえます。4,000万円の住宅ローンについては基本的にそのまま支払う必要があります。
住宅ローン特則を利用する場合、「住宅ローンは減額対象から省く」というルールをしっかり押さえておきましょう。
3.財産があるときには減額されにくくなる
個人再生をすると、原則的には「最低弁済基準額」まで減額されますが、例外があります。それは、債務者が一定以上の財産を持っているケースです。
3-1.清算価値保障原則とは
個人再生では、「債務者は最低限、自分が保有している財産額までは支払をしなければならない」というルールが適用されます。
たとえば、300万円分の財産を持っている人は、最低でも300万円は払わねばなりません。
自分が持っている財産額よりも借金返済額が低くなってしまったら、債権者が納得でいないためです。「破産させて全財産を配当させた方がよい」と考えるでしょう。
そのような不合理な状態を避けるために「最低限、財産額については支払わねばならない」ルールが設定されています。これを「清算価値保障原則」といいます。
借金額をもとにした「最低弁済基準額」よりも保有している財産額が大きい場合には、思ったほど借金が減額されない可能性があります。
3-2.清算価値保障原則が適用される具体例
借金額が600万円、財産が80万円の方が個人再生をする場合には、最低弁済基準である120万円にまで借金を減らしてもらえます。毎月の返済額は33,400円程度です(3年で支払う場合)。
一方で借金額が同じ600万円でも財産額が200万円ある方は、200万円にまでしか借金を減らしてもらえません。毎月の返済額は55,600円にまで上がってしまいます。
このように個人再生をするとき、財産があると多くの支払が必要になる可能性があるので注意しましょう。財産がなくなる心配は基本的にありませんが、借金が減額されにくくなるデメリットがあります。
3-3.本人名義以外の財産は考慮しなくていい
個人再生の清算価値保障原則で考慮される「財産」は、基本的に「債務者名義」のもののみです。配偶者や親、子どもなど家族名義の財産は考慮されないので安心してください。
たとえば、家や車、預貯金などが家族名義であれば、借金返済額が上がる心配はありません。保険契約の場合には「契約者」を基準にして財産の名義人を決定します。
個人再生するときに財産が心配になったら、各種の財産について「名義が誰になっているか」を確認してみてください。
4.給与所得者等再生の場合
個人再生には「給与所得者等再生」という手続きがあります。
給与所得者等再生とは、会社員や公務員などの給与所得者や年金生活者など、収入が極めて安定している人が利用できる個人再生手続きです。
これに対し原則的な個人再生を「小規模個人再生」といいます。
給与所得者等再生を利用する場合には「可処分所得の2年分」以下には借金が減額されません。可処分所得とは、収入のうち自分の自由に使える部分です。ケースごとに専門的な計算方法を適用して算出します。
可処分所得の2年分を計算すると、多くの事例で「最低弁済基準」や「本人の持つ財産額」よりも大きな数字になる傾向があります。
給与所得者等再生を利用すると、一般的な小規模個人再生よりも返済額が上がってしまう可能性が高いと考えましょう。
一方で、給与所得者等再生を利用すると、債権者が反対していても再生計画案を認可してもらえるメリットがあります。
多数の債権者や大口の債権者とトラブルになっていて小規模個人再生では再生計画案を認可してもらいにくい場合に利用するのがお勧めです。
5.個人再生でどこまで借金が減るのか?具体例で解説!
実際に個人再生をすると借金額がどこまで減額されるのか、具体例でみてみましょう。
5-1.借金が500万円のAさん
借金が500万円で特に財産をもっていない場合、借金返済額は100万円にまで減額されます。
3年で返済するケースが多いので、毎月の返済額は27,800円程度になります。
5-2.借金が600万円、住宅ローンが3,000万円のBさん(住宅資金特別条項あり)
借金が600万円で住宅ローンが3,000万円、住宅ローン特則を適用するBさんの場合、600万円を基準に最低弁済額を計算します。
よって借金返済額は120万円となり、住宅ローンの3,000万円はそのまま残ります。
120万円の借金は、月々33,400円程度ずつ3年間払えば完済。その後は住宅ローンのみの返済となります。
5-3.借金が600万円、住宅ローン残債が1,000万円のCさん(住宅資金特別条項なし)
借金が600万円、住宅ローンは滞納しすぎて家が競売となり、残債が1,000万円残っているとCさんについてみてみましょう。住宅ローンの保証会社からは1,000万円や遅延損害金の一括払いを求められています。
この場合、住宅ローン特則を使わないので「借金1,600万円」として計算します。
すると借金は300万円にまで減額され、毎月の支払額は83,400円程度にまで減額されます。
5-3.借金が700万円、財産額が300万円のDさん
借金額が700万円のDさんは、財産がなければ140万円にまで借金を減額してもらえるはずです。しかし300万円分の財産があるので、返済額は300万円までしか減りません。
3年で支払うなら毎月の支払額は38,900円程度となります。
とはいえ700万円の借金が半額以下に減り利息もカットしてもらえるので、メリットを得られるのは確かといえるでしょう。
6.個人再生の減額率を知りたい方は弁護士までご相談を
個人再生でどこまで減額されるのかは、その方の置かれた状況によって異なります。具体的にどこまで減らせるか知りたい方は、弁護士までご相談ください。結果に応じて、最適な債務整理方法をご案内いたします。
高額な借金でも住宅ローンを抱えていても、債務整理をすれば解決できます。あきらめずに専門家へ相談するところから始めましょう。