せっかく個人再生を申し立てても、棄却されたり再生計画案を認可してもらえなかったりして失敗してしまうケースがあります。
そこで、個人再生に失敗するパターンと、より確実に個人再生を成功させる方法を紹介します。これから個人再生を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
1.個人再生の失敗とはどういった状況なのか?
個人再生の失敗といっても、いくつかのパターンがあります。まずはどういった状況なのか、みてみましょう。
1-1.申立を棄却される
個人再生の申立をしても、明らかに要件を満たしていなければ「棄却」されてしまいます。手続きを先に進めてもらえないので失敗します。
1-2.手続きが廃止される
個人再生の手続きを途中まで進めてもらえても、問題が発覚したら途中で中止されてしまいます。これを法律的には廃止といいます。手続きが廃止されたらその時点で個人再生に頓挫するので、失敗します。
1-3.再生計画が認可されない
個人再生で借金を減額するには、手続きの終局場面で「再生計画」を認可してもらわねばなりません。裁判所が認可しなければ借金を減額してもらえないので、個人再生に失敗します。
1-4.手続き後の支払いができなくなる
再生計画を認可してもらったら、その後原則として3年間、返済を続けなければなりません。個人再生後の支払ができなくなったら債権者から督促をされたり裁判を起こされたりするので、個人再生に失敗します。
1-5.手続き後、再生計画が取り消される
再生計画が認可されても「実は不正行為があった」事実が発覚したら再生計画の認可決定が取り消される可能性があります。そうなったら借金は元通りになってしまうので個人再生に失敗します。
1-6.申立を取り下げる
実は個人再生を申し立てても、申立人が自主的に取り下げてしまうケースが少なくありません。よくあるのは、申立内容に無理や不備があり、このまま継続しても認可される見込みがないケースです。廃止や不認可になる前に、裁判所から取り下げるように促されて債務者自らが取り下げをします。
こうした取り下げのパターンも、失敗の1種といえるでしょう。
ただし、取り下げには、家族から支援を受けられることになったので個人再生する必要がなくなった場合なども含まれます。必ずしも100%失敗とはいい切れません。
2.個人再生の失敗率はどのくらい?
実際、個人再生に失敗する割合はどのくらいあるのでしょうか?
令和元年の司法統計によると(第109表)、年間通じての小規模個人再生の申立件数は12,628件、給与所得者等再生の申立件数は851件です。
そのうち無事に終結した件数は、小規模個人再生が11,860件、給与所得者等再生が772件となっています。
廃止、不認可、取消や却下などの「失敗」は、小規模個人再生で385件、給与所得者等再生で21件。割合になおすと、小規模個人再生の場合に3.2%程度、給与所得者等再生の場合に2.4%程度が失敗しているといえます(ただしここに取り下げは含みません)。
3.個人再生に失敗しやすいパターン
具体的に個人再生に失敗するパターンとしてどういったケースが多いのか、ご紹介します。
3-1.収入が足りない
非常に多いのが「収入が足りない」場合です。
個人再生をすると、手続き後の3年の間に減額された借金を支払わねばなりません。支払ができそうもない状況であれば、裁判所は再生計画を認可しません。
当初の段階で明らかに支払能力が無かったら申立が棄却される可能性もありますし、途中で廃止される可能性もあります。
3-2.履行テストをクリアできない
個人再生を申し立てると、毎月一定額を積み立てるよう指示されます。
個人再生後は決まった金額を支払わねばならないので、手続き中の段階から慣れておくように、という趣旨です。積立ができない人は、個人再生後の支払もできないと考えられるので、手続きを進めてもらえません。
裁判所の指示とおりにきちんと積立ができなければ、手続きが廃止されたり取り下げを求められたりして失敗する可能性が高まります。
3-3.負債額が大きすぎる
個人再生には「限度額」があります。具体的には5,000万円を超える借金があると、個人再生を利用できません。負債額が大きすぎると個人再生は進めてもらえないので注意しましょう。ただし、住宅ローン特則を適用する場合の住宅ローンの残額は、5,000万円に含まず計算します。
また、5,000万円を超えなくても負債額が大きすぎると個人再生が難しくなる可能性があります。負債額が大きいと、減額しても支払が困難になりやすいためです。特に住宅ローン特則を利用するときに他の借金の金額が大きすぎると、住宅ローンと再生債務の支払を合わせて行っていくのが難しくなるでしょう。結局は裁判所に促されて取り下げざるを得なくなる可能性もあります。
個人再生を利用したい場合には「減額された借金を払いきれるか」しっかり検討しましょう。
3-4.財産隠しをした
個人再生では、債務者の手持ちの財産をすべて明らかにして裁判所へ報告しなければなりません。「清算価値保障原則」といって、債務者の保有する財産額については最低限、支払わねばならないルールが適用されるためです。
個人再生をしても財産が失われることは基本的にありませんが、財産が多くなると借金を減額してもらいにくくなるデメリットがあります。
稀に、支払い額が上がるのをおそれて、裁判所へ財産を正直に申告せずに少なめに報告する人がいます。そのような不正をすると、発覚したときに手続きを進めてもらえなくなったり後から再生計画を取り消されたりする可能性があります。財産は正直に申告しましょう。
3-5.債権者隠しをした
個人再生では、すべての債権者を手続きにのせて平等に取り扱わねばなりません。
一部の債権者のみを優遇して支払ったり、一部の債権者を隠して手続きを進めたりするのはルール違反です。
もしも債権者隠しや一部の債権者への支払が発覚すると、一部の債権者へ支払った分を上乗せして全体の債権者へ支払わねばなりません。最低弁済額が上がってしまい、支払が難しくなる可能性があります。
3-6.債権者が反対した
小規模個人再生では、手続きの終盤で「再生計画案に関する債権者による書面決議」が行われます。ここでは債権者にアンケートをとり、「再生計画案に同意するかどうか」を尋ねます。
「過半数の債権者」が反対したら、再生計画案は認可されません。
ここでいう過半数は「人数」と「債権額」の両方を意味します。
「過半数の人数」の債権者が反対したら、再生計画案は認可されません。
それだけではなく「1人」であっても「債権額が過半数」の債権者が反対したら、やはり再生計画案が認可されないのです。
このように、多数の債権者や大口の債権者が個人再生に反対していると、小規模個人再生は難しくなる可能性があります。
その場合には、書面決議のない給与所得者等再生を利用しましょう。
3-7.住宅ローン特則を適用できない
個人再生でよくある失敗として「住宅ローン特則を利用できない」パターンもよくあります。
個人再生を利用する場合「住宅ローン特則を適用して家を守りたい」と希望している方が多数です。ただ住宅ローン特則には「適用条件」があるので、条件を満たさなければ利用できません。
- 家は債務者の所有物件である
本人所有物件でないと住宅ローン特則を適用できません。配偶者や親、法人名義などの家では利用できないので注意しましょう。
- 住宅の床面積の2分の1以上が、本人の居住に用いられている
二世帯住宅や店舗用物件などの場合、床面積の2分の1以上が本人の居住に用いられていなければなりません。他世帯の居住スペースや店舗スペースが広すぎると、住宅ローン特則を適用できない可能性があります。
- 住宅ローン以外の抵当権が設定されていない
住宅ローン以外の「不動産担保ローン」などが設定されていると、住宅ローン特則を適用できません。
- 代位弁済が起こっている場合、代位弁済後6ヶ月以内である
住宅ローンを滞納しすぎて保証会社が代位弁済している場合、代位弁済から6ヶ月以内でなければ住宅ローン特則を適用できません。
競売との関係 住宅ローンを滞納して競売が起こっていても住宅ローン特則を適用できます。裁判所へ申立をして、競売手続きを中止してもらえるからです。 しかし、あまりに手続きが進むと、中止が難しくなる可能性があります。また滞納期間が長くなると高額な遅延損害金が発生し、債務の支払自身が困難となるでしょう。 住宅ローン特則を適用したいなら、滞納する前に早めに対応するのが大切です。 |
3-8.手続き後に払えなくなる
せっかく個人再生で再生計画が認可されても、手続き後の支払いができなくなる方がおられます。
その場合、放っておくと裁判や差押えをされたり再生計画を取り消されたりするリスクが発生します。再度個人再生を申し立てるかハードシップ免責を適用するか、あるいは自己破産するかなどの対応を求められるでしょう。
個人再生手続き後、再生債務を完済するまではくれぐれも浪費を慎み、慎重に生活してください。
4.個人再生は弁護士へ相談を
個人再生の失敗率は3%程度であり、高くはありません。多くの方が成功する手続きといえるでしょう。
しかし、きちんと対応しなければ、手続きが廃止されたり再生計画案を認可してもらえなかったりして失敗するケースはあります。
より確実に成功させるには、弁護士のアドバイスにきっちり従いながら正しい方法で進めましょう。借金にお困りの際には、お早めにご相談ください。