借金を払えないとき「クレジットカードの現金化」をしてはいけない理由

借金の返済が厳しくなってくると、「クレジットカードの現金化」に手を出してしまう方が少なくありません。

クレジットカードの現金化とは簡単にいうと、クレジットカードのショッピング枠で物を購入してすぐに売却し、現金を得ることです。

実はクレジットカードの現金化をしてしまうと、債務整理が困難となる可能性が高くなります。お金に困ったとしても、現金化をしてはなりません。

そこで、クレジットカードの現金化にともなう債務整理に関するリスクについて、解説します。

 

1.クレジットカードの現金化とは

クレジットカードの現金化とは、クレジットカードのショッピング枠を「現金」に換える行為全般をいいます。

クレジットカードにはショッピング枠とキャッシング枠の2種類があります。ショッピング枠はカード会社に買い物の立て替え払いをしてもらえる枠(限度額)、キャッシング枠はカード会社から借金をするための枠(限度額)です。

キャッシング枠がいっぱいになってもショッピング枠にあまりがある方もおられるでしょう。そういった方が、支払が苦しくなったときに「ショッピング枠を現金化」しようと考えるケースが少なからず存在します。

クレジットカードの現金化には大きく分けて以下の2種類の方法がありますが、いずれもリスクが高いのでやってはいけません。

 

1-1.自分で物を買って現金化する

新幹線の回数券や新発売のゲーム機、iPhoneなどの高額な商品を購入し、すぐにチケット屋やリサイクルショップ、フリマアプリなどで売却して現金を得る方法です。

 

1-2.業者を使って現金化

クレジットカードの現金化専門の業者に依頼してショッピング枠を現金化する方法です。そうした業者は「現金化は違法ではない、安全です」などと宣伝しているので、ついつい利用してしまう方がおられます。

しかし「違法でない」としても、カード会社の規約違反にはなります。また後の債務整理が困難となる高いリスクが発生するので、絶対に利用しないでください。

以下でクレジットカードの現金化をすると債務整理との関係でどういったリスクが発生するのか、みていきましょう。

 

2.任意整理が難しくなるリスク

任意整理は、カード会社を始めとする債権者と直接交渉し、借金の利息をカットしてもらって支払期間を調整し、返済可能な範囲にする債務整理の方法です。

クレジットカードのショッピング枠を現金化すると、利用履歴がカード会社へ伝わるのですぐに知られてしまいます。カード会社にしてみれば「手数料を払わないための悪質な行為」と理解するでしょう。

すると任意整理で手数料や利息の減額を求めても、応じてもらえない可能性が高くなります。最低でも現金化分の手数料は請求されるでしょうし、一切話し合いに応じてもらえないケースも少なくありません。

 

クレジットカードの現金化をしてしまったときに任意整理する方法

クレジットカードの現金化をしてカード会社が話し合いに応じてくれないときに任意整理で解決するには、現金化したカード会社以外の債権者の負債のみを対象とする他ありません。話合いに応じてくれないカード会社の負債については、それまで通り支払う必要があります。

 

3.個人再生が難しくなるリスク

個人再生は、裁判所へ申立をして借金を大幅に減額してもらう債務整理手続きです。

個人再生に成功すると、借金の元本を含めて5分の1や100万円にまで減額されるので、負債が大きく膨らんだ方にとって非常に有効な対処方法となります。住宅ローンのある方は、家を守るための「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」も利用できて、大変便利な債務整理方法といえるでしょう。

ただ、個人再生を成功させるには、最終局面で「過半数の債権者による反対がないこと」が必要です。多数の債権者や高額な債権者が反対すると、再生計画案が認可されずに個人再生に失敗してしまいます。

クレジットカードを現金化すると、カード会社が「悪質な行為」ととらえるので、個人再生に反対する可能性があります。カード会社が大口の債権者であったり、多数のカードで現金化をして各カード会社から反対意見を出されたりしたら、せっかく個人再生をしても再生計画案を否決されてしまうおそれが高くなるでしょう。

クレジットカードの現金化をすると個人再生でも高いリスクが発生するので、絶対にやってはいけません。

 

クレジットカードの現金化をしても個人再生できるケース

現金化したカード会社の債権が少額で人数的にも過半数でない場合には、反対されても再生計画案を認可してもらえる可能性があります。

また「給与所得者等再生」であれば、再生計画案についての書面決議が行われないので、債権者が反対していても個人再生を成功させられます。

 

4.自己破産で免責されにくくなるリスク

クレジットカードの現金化をすると、自己破産との関係でも高いリスクが発生します。

自己破産には「免責不許可事由」があるためです。免責不許可事由とは、該当すると「免責」を得られなくなる事情です。免責とは、「借金などの負債の支払い義務を免除する決定」。免責を得られないと借金がなくならないので、自己破産する意味がありません。

クレジットカードの現金化は債権者に大きな損失を与える行為なので、破産法上「免責不許可事由」の1つとされています。

自己破産を申し立てたとき、近い時期にクレジットカードの現金化をしていたら「免責不許可事由」と判定され、免責が認められない可能性が高くなるといえるでしょう。

 

4-1.裁量免責について

ただし自己破産には「裁量免責」という制度があります。これは、免責不許可事由に該当する事情があっても、裁判所が裁量によって免責を認めても良い、という制度です。

自己破産前にクレジットカードの現金化をしていても、状況によっては裁判官に裁量免責してもらえる可能性があります。「現金化をしたから自己破産はできない」わけではありません。

たとえば以下のような場合には裁量免責が認められやすいといえるでしょう。

  • クレジットカードの現金化の金額が小さい
  • クレジットカードの現金化をした回数が少ない
  • クレジットカードの現金化をした時期が自己破産申立時期より随分前である
  • 自己破産は初めてである
  • 他に問題行動が一切ない

実際には、免責不許可事由があってもほとんどのケースで裁量免責されています。クレジットカードの現金化をしても自己破産できる可能性はあるので、あきらめずに弁護士までご相談ください。

 

4-2.裁量免責されるとしても発生するリスク

確かにクレジットカードの現金化をしても裁量免責によって免責される可能性があります。その場合でも別のリスクが発生するので知っておいてください。

それは「管財事件」になりやすいリスクです。

自己破産には簡単な「同時廃止」という手続きと複雑な「管財事件」という手続きがあります。同時廃止は、基本的にほとんど財産がない人が破産する際に適用される簡易な手続きです。破産申立をして「破産手続き開始決定」が出ると同時に手続きが廃止されて終了し、破産管財人は選任されません。2~3ヶ月で免責決定が出ますし、費用も安く済みます。

一方、管財事件は、基本的に一定以上の財産がある人が破産するときに適用される手続きです。破産手続き開始決定とともに「破産管財人」が選任され、裁判所で債権者集会が開かれます。債務者も出席しなければなりません。また管財人の予納金として20万円程度の費用が発生し、かかる費用も高額になって期間も長くなります。債務者にとっては大きな負担となるでしょう。

悪質な免責不許可事由があると、特に財産がなくても管財事件とさりやすい傾向があります。クレジットカードの現金化をしても必ず管財事件になるとは限りませんが、場合によってはそういった可能性もあることを忘れないようにしましょう。

 

5.借金問題で悩んだら弁護士へ相談を

借金問題に追い詰められると、クレジットカードの現金化を始めとしてリスクの高い行動をしてしまう方が少なくありません。間違った対応により無用なリスクをとってしまう前に、弁護士へ相談して正しい対処方法を知りましょう。早く対応すればするほど少ないダメージで借金問題を解決できるものです。

既にクレジットカードの現金化をしてしまった方でも、解決できる可能性は充分に残されています。あきらめずに弁護士までご相談ください。

 

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