専業主婦(主夫を含みます)の方でも、クレジットカードのショッピングや銀行カードローンを利用するうちに、借金が膨れあがってしまうケースがあります。
そんなとき「債務整理」で解決できるのでしょうか?
専業主婦の方が債務整理する方法とその際の注意点を解説します。
このページの目次
1.専業主婦でも債務整理できる
専業主婦でも債務整理できることがありますし、債務整理すれば借金問題を解決できます。
債務整理とは、借金返済額を減額や免除してもらうための手続きの総称です。たくさん借金があっても、無職無収入の方でも、状況に応じた方法で債務整理をすれば、借金トラブルから解放されます。
たとえば、毎月8万円の借金を払っている方が任意整理をすれば、月々の返済額が4万円やそれ以下まで減るケースもあります。自己破産をすれば返済は一切不要となり、その効果は非常に大きいといえるでしょう。
当事務所にも専業主婦で借金を抱えた方がよく相談に来られますし、そういった方も債務整理で借金トラブルから解放されています。
2.専業主婦が選べる債務整理方法は「任意整理」か「自己破産」
債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類がありますが、専業主婦の場合には、原則として「個人再生」を選択できないと考えましょう。
なお、パートなどである程度収入のある場合には、「個人再生」ができる可能性もあります。
2-1.任意整理とは
任意整理とは、借金にかかる「利息」をカットしてもらって返済方法を決め直す手続きです。
任意整理をすると、高額な利息や手数料がカットされるので、リボ払いなどの高利率(手数料)な借金に非常に有効です。
たとえば100万円の借金があり毎月35,000円程度の支払をしている方が任意整理をすると、毎月の支払額を16,600円程度にまで抑えられる可能性があります(5年払いに設定した場合。ただし、必ず5年払いに応じてもらえるわけではありません)。
【任意整理後の毎月の返済額早見表(例)】
借金額 |
任意整理後の毎月返済額(5年払いの場合) |
50万円 |
8,300円 |
100万円 |
16,600円 |
150万円 |
25,000円 |
200万円 |
33,300円 |
250万円 |
41,600円 |
300万円 |
50,000円 |
350万円 |
58,300円 |
400万円 |
66,600円 |
任意整理をすると、債権者との合意後に返済しなければなりません。基本的には「収入」のある方しか利用できない手続きです。 ただし、専業主婦であっても、ご家族で話し合って、たとえば夫の給料から返済することも可能です。 時間的に余裕があるなら、パートに出たり在宅ワークをしたりして自分の収入を得る方法もあるでしょう。 |
2-2.自己破産とは
自己破産は、裁判所へ申請をして借金返済義務を免除してもらう手続きです。すべての借金が免除されるので、一切の支払が不要となります。
ただし、任意整理と比べるとたくさんの書類が必要で、裁判所に行かねばならないケースも少なくありません。「借金が0になる」という強力な効果がある分、手続きに時間と労力がかかると考えましょう。
自己破産すると借金返済義務が完全に免除されるので、本人に収入は不要です。無職無収入の方でも自己破産できるので、専業主婦でも問題ありません。 |
2-3.専業主婦が個人再生できない理由
債務整理の3つ目の方法として「個人再生」があります。専業主婦は、原則として個人再生を選択できません。
個人再生するには「本人に安定した収入」が必要だからです。裁判所が厳しく収入状況を審査し「本当に支払ができる人かどうか」を判定します。このとき、「本人の収入」がなければ裁判所に個人再生の支払計画を認可してもらえません。「夫の給料から払う」といっても、個人再生では認められないのです。
そこで収入の無い専業主婦の場合、原則として個人再生は利用できません。
ただし、パートや契約社員などでご自身の収入のある兼業主婦ならば、個人再生できる可能性もあります。
3.専業主婦が債務整理した場合、家族はどうなるか
夫や子どものいる専業主婦の方は「自分が債務整理したら家族に迷惑がかかるのでは?」と心配される方がおられますが、基本的には、家族に迷惑はかからないと考えていいと思います。
3-1.家族に借金督促は来ない
自分が債務整理をしたら、「夫や子どもに督促されるのではないか?」と心配される方がいらっしゃいますが、その心配は不要です。借金は個人が行うものだからです。
妻名義の借金はあくまで妻のものであり、夫や子どもに返済義務はありません。
夫や子どもが「保証人」になっていない限りは、家族に督促されることはないと考えましょう。
3-2.家族に知られないケースも多い
債務整理を家族に知られたくない場合、秘密で債務整理する方法もあります。
特に任意整理であれば、必要書類もほとんどなく裁判所にも行かなくて良いので、同居の夫や子どもにも勘づかれにくいでしょう。
3-3.ブラックリストになっても問題は小さい
債務整理をすると、いわゆる「ブラックリスト」状態になり、ローンやクレジットカードの審査にとおらなくなってしまいます。これは、債務整理によって「個人信用情報」に「事故情報」「異動情報」「代位弁済情報」などのネガティブ情報が登録されてしまうからです。
ただ、ブラックリスト状態になるのは債務整理した本人のみで、家族の信用情報には影響がありません。
夫自身が債務整理や延滞していなければ、夫は住宅ローンやクレジットカードを利用できます。
3-4.家族の財産はなくならない
専業主婦が自己破産を検討するとき「夫の財産までとられるのでは?」と心配する方が少なくありませんが、自己破産によって失われるのは自分名義の資産だけであり、家族名義の資産には影響しません。
夫名義の家や預貯金、保険などには基本的に影響がないので、安心しましょう。
4.専業主婦が任意整理するときの注意点
専業主婦が任意整理するときには、以下の点に注意しましょう。
4-1.支払ができなくなったら督促が来る
任意整理をすると、その後3~5年の間支払をしなければなりません。延滞すると、債権者から督促が来てしまいます。
2ヶ月分以上滞納すると、そのときの残債務の一括払いを求められるケースが多いので注意しましょう。任意整理後の支払いができない場合、自己破産しなければならない可能性があります。
任意整理後の返済中は無駄遣いをせず「債権者への支払を最優先」にした生活をしましょう。
4-2.家族カードは夫の負債になる
専業主婦の場合「夫の家族カード」で借金しているケースもあります。家族カードの負債は「本カードの名義人の借金」となるので注意してください。
夫の家族カードのショッピングやキャッシングは夫に支払い義務が及びます。支払ができないなら、夫が債務整理しなければなりません。もちろん「夫に内緒で債務整理」というわけにはいかなくなります。
5.自己破産するときの注意点
自己破産するときには、以下の点に注意しましょう。
5-1.自分名義の財産がなくなる
自己破産をすると、自分名義の財産が失われます。
不動産、車、預貯金、保険など妻名義で契約したり取得したりしているものがあれば、なくなる可能性があると考えましょう。
ただし、自己破産をしてもすべての財産が失われるわけではありません。現金なら99万円、個別の財産なら20万円程度まで維持できるケースが多数です。預貯金が20万円以下、保険の解約返戻金が20万円以下ならそのまま持ち続けられます。
自分名義の財産が少ない方の場合、自己破産をしてもリスクは低いでしょう。
遺産相続で高額な預貯金や不動産を取得した場合、昔働いていたときに夫と共同で住宅ローンを組んで家を共有にしている場合、妻名義で車のローンを組んでいる場合などには財産が失われる可能性が高いので、要注意です。 |
5-2.夫に知られる可能性が高くなる
自己破産をするにはたくさんの書類が必要となりますし、裁判所へ行かねばならない機会もあります。同居の家族に知られるリスクが高くなるので、夫に知られたくない方は注意しましょう。
ただし必ず知られるわけではありません。状況によっては秘密にできる可能性もあるので、悩んでいるなら弁護士に対応方法を相談してみてください。
6.専業主婦には任意整理と自己破産、どちらがお勧め?
6-1.失う財産がないなら自己破産がお勧め
特に自分名義の不動産や車、保険や預貯金などもなく失う財産がないなら、基本的に自己破産がお勧めです。
自己破産をすると借金返済義務がなくなるので、手続き後に滞納するリスクがないためです。
6-2.夫に知られたくないなら任意整理がお勧め
「夫に知られたくない」方には任意整理がお勧めです。自己破産よりは知られるリスクが低くなるためです。ただし、自己破産であっても秘密で進められるケースはあるので、任意整理で解決できない場合には自己破産を選択しましょう。
6-3.ご家族の協力が得られないなら自己破産がお勧め
ご家族の協力が得られず、夫の給料から支払うのが難しい場合、専業主婦の任意整理は困難です。基本的に自己破産しなければならないでしょう。ただし、パートなどで収入を得られるなら、任意整理できる可能性もあります。
専業主婦(主夫)の方でも任意整理または自己破産をすれば借金問題を解決できるケースがあります。どちらが向いているか分からない場合、弁護士がベターな方法をアドバイスいたします。1人で抱え込まずに弁護士までご相談ください。